「樹木葬」とは…その成り立ちと供養方法

日本に於ける樹木葬は墓地、埋葬に関する法律に基ずき認可された墓地の地中にご遺骨を埋蔵し、墓石の代りに樹木を墓標とする埋葬の形です。樹木墓地、樹林墓地などとも呼ばれます。

樹木葬の霊園樹木葬の歴史は樹木葬の定義が明確でない為、何時から何処ではじまったと規定はできません。海外での有名な樹木葬墓地を挙げると、環境保護に対する国民性が高く キリスト教の伝統が必ずしも強く無いドイツ連邦共和国の「ミュンヘン森林墓地」がございます。ミュンヘン森林墓地は1899年から1907年の間に造成され、樹木葬墓地として設計された最初の事例になります。

 

現代日本に於ける最初の樹木葬墓地は1999年に開設された岩手県一関市の宗教法人「知勝院」です。知勝院では里山にご遺骨を埋葬するタイプと整備された霊園の区画に埋葬するタイプとが提供されました。

公営霊園の樹木葬墓地としては2012年に開設された東京都の小平霊園樹林墓地が有名です。また、横浜市営ではメモリアルグリーン(戸塚区)の合葬式樹木墓地が提供されて居り、日本国内各地でも樹木葬墓地が多数提供され始めています。

現代の日本に於ける高齢化率は既に25%を超え、家族構成も単身所帯が30%を超えました。従来の家族制度を基にした先祖代々の墓制度を継承するには困難な環境となりつつあります。この様な環境下では個人がご自分のお墓のことを考えると同時に「親のお墓の供養をどのように続けるのか」を考慮しなければならない状況です。この様な中で継承を前提としない樹木葬は注目に値するお墓とも言えます。墓石も必要とせず、特定区画を必要としない合同埋蔵であれば、必要とされる費用も限られたものとなります。

樹木葬のご遺骨埋蔵の形態

  • 区画の永代使用権を得てお骨壺を埋蔵し、その墓標として植樹する
  • 樹木墓地の中の指定場所にお骨壺を埋蔵する
  • 樹林墓地の特定場所にご遺骨を合同埋蔵する
  • 樹木墓地の指定場所にご遺骨を砕骨して最小化し埋蔵する

これらが一般的です。

岩手県一関市の知勝院では『区画の永代使用権を得てお骨壺を埋蔵し、その墓標として植樹する』と『樹林墓地の特定場所にご遺骨を合同埋蔵する』が提供されており、現地の里山保護にも寄与しています。

東京都営の小平霊園では『樹木墓地の中の指定場所にお骨壺を埋蔵する』と『樹林墓地の特定場所にご遺骨を合同埋蔵する』が提供されております。

横浜市営のメモリアルグリーン(戸塚)では『樹林墓地の特定場所にご遺骨を合同埋蔵する』合葬式樹木墓地が提供されています。

この他に多くの私営霊園が樹木葬墓地を提供しておりますが、大多数は『樹木墓地の指定場所にご遺骨を砕骨して最小化し埋蔵する』の形態となります。面白い形態としては島根県壱岐郡海士町に属する無人島カズラ島で行われている散骨樹木葬です。島全体が霊園として登録されており、この島の樹林に有料で散骨する事が可能となっています。

余談ですが、お隣の韓国では儒教を基にした葬送文化が過去500年に亘り、継承されて来ました。そのお墓は山野に大きな土葬墓を造成することで、現在の墳墓の総面積は国土の1%を超える規模となっています。この深刻な土地問題に直面して政府は2006年に埋葬に関する法律を改正し、土葬墓を止めて樹木葬を採用すべく推進するとなりました。韓国でも大家族での生活形態から、日本と同様に生活の都市化や核家族化が進捗し、お墓を守ることの困難さゆえに樹木葬は急速に普及し始めております。しかし、現状では供給不足で価格が高騰しており、その対策も必要とのことです。